銘柄レポート

FFRIセキュリティ(3692)株価分析 情報・通信業

営業利益は3年で6.8倍、過去3年の決算はすべて期初の会社予想を大きく上回って着地した。それでも株価は昨年10月の高値からまだ6割下にいる。
原因は業績ではなく、「AIはこの会社の味方か、敵か」という前提そのものが揺れたこと——決算もIRも出ていない日に株価が14%動く、この銘柄の特殊な力学をこの1ページで整理する。

FFRIセキュリティの今と見どころ2026-07-17までの取引データで作成
執筆:2026-07-21
次回更新:7/25(土)ごろ
30秒だけの人へ
  • 会社の実力に文句はない。5/15発表の本決算は営業利益+67%で着地・増配・3年後の中期計画も引き上げ。3年連続で期初予想を+49%〜+160%上回る「低めに置く癖」の会社。
  • それでも株価は昨年10月の高値13,800円から▼63%2/24のクロード・ミュトス・ショック(新型AIの話題だけで▼14.2%・市場全体は上昇・この日IRはゼロ)、5月の控えめな来期予想(営業+6.5%)への失望、そして6月に公表された創業社長の株式売却が重なった。
  • 焦点は8月中旬の1Q決算=「+6.5%は例年どおりの低め置きか、本当の減速か」の最初の答え。株価の確認の物差しは25日線(5,099円)と押し安値4,690円。
いまの状態
業績会社予想は増収増益(売上+18.1%・営業+6.5%)。ただし過去3年は期初予想を毎年大幅に上回って着地(+160%→+59%→+49%) 株価の流れ下降トレンドのあとの底ばい(高値から▼63%・6/26の4,395円で下げ止まり、7/17の全面安で再び25日線上の攻防) 需給信用倍率1.6倍=よくある範囲。買い残49.6万株は1年前のピーク114万株から半分以下に減った。一方、6月に創業社長の株式売却(発行済の約2.1%)が公表された 割安度PER 35.5倍=直近2年の中央値(55.6倍)より下。ただし市場平均よりは高く「成長継続」を織り込んだ値段
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📅 これからの予定 — FFRIセキュリティ(3692)に関連するもの

未来のことで確定している数少ない事実=「いつ・何が出るか」。自社の予定だけでなく、市場全体の経済イベントもここに出ます。日付はすべて日本時間・日をタップすると詳細が表示されます。

7/30(木)★FOMC(米金融政策) 結果発表市場全体
日本時間 3:00 結果発表・3:30 議長会見
東京が反応する日: 7/30(木)
照合済み・日本が結果を知るのは7/30の未明。東京市場は同日朝から反応
7/30(木)★日銀 金融政策決定会合市場全体
日本時間 結果は7/31昼ごろ・総裁会見15:30
東京が反応する日: 7/31(金)
照合済み・展望レポート(経済・物価情勢の展望)の公表回。結果は7/31のザラバ中に出る
8/7(金)★米雇用統計(7月分)市場全体
日本時間 21:30
東京が反応する日: 8/10(月)
照合済み・金曜夜の発表。東京が反応できるのは週明け8/10(月)
8/12(水)★米CPI(消費者物価・7月分)市場全体
日本時間 21:30
東京が反応する日: 8/13(木)
照合済み・水曜夜の発表。東京の反応は翌8/13
8/13(木)ごろFFRIセキュリティ(3692) 1Q決算(予測)自社・予測
過去5年の同四半期(中心8/13・前年8/13)・開示は15:30(取引終了後)が多い。会社が正式発表したら確定日に置き換えます
7/31(金)ごろデジタルアーツ(2326) 1Q決算(予測)同業・予測
過去5年の同四半期(中心7/31・前年7/31)・開示は引け後が多い
8/7(金)ごろソリトンシステムズ(3040) 2Q決算(予測)同業・予測
過去5年の同四半期(中心8/7・前年8/8)・開示は引け後が多い
8/10(月)ごろトレンドマイクロ(4704) 2Q決算(予測)同業・予測
過去5年の同四半期(中心8/10・前年8/7)・開示は引け後が多い。12月期決算
8/14(金)ごろサイバーセキュリティクラウド(4493) 2Q決算(予測)同業・予測
過去5年の同四半期(中心8/14・前年8/14)・開示は引け後が多い。12月期決算
2026年10月〜サイバー対処能力強化法が順次施行(能動的サイバー防御)テーマ・予定圏
会社の決算説明資料(2026年5月)より。政府向け需要の制度的な土台になるイベント
速報直近の動き — FFRIセキュリティ(3692)に関連するかもしれないニュース
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株価と出来事(過去75営業日・調整後終値) 2026-03-31 → 07-17

丸い番号をタップすると、その出来事の「なぜ」に飛びます。

IR(会社発表) 業界・市場ニュース 思惑・材料ニュース 時系列の補足
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出典:株価・信用データはマーケットデータ、市場のできごとは適時開示ほか公開情報。金額は調整後終値。チャート:TradingView Lightweight Charts™

終値(調整後)
5,090円
2026-07-17
昨年来高値からの下落
▼63.1%
高値13,800円(2025/10/21・取引時間中)から
直近2日の値動き
7/16▼2.3%7/17▼7.8%
7/17は市場全体の急落日(TOPIX ▼2.7%)。それでも下げ幅は市場の3倍
信用倍率
1.6倍
買い残49.6万株はピーク比▼57%(7/10時点)=重しは軽い

3つの視点で見る(2026-07-17時点)

ファンダメンタルズ

3年連続で期初予想を+49%〜+160%上回る着地。営業利益は3年で6.8倍。来期予想の営業+6.5%は「予想を低めに置く会社の癖」を知った上で読む数字(同じ日に3年後の中期計画は引き上げている)。PER 35.5倍は再評価が始まる前の2024年春の水準まで戻った。

需給

信用倍率1.6倍・買い残49.6万株(1日の出来高の約4.1日分)。1年前のピーク114万株から半分以下に減り、高値づかみの投げは大きく進んだ。売り残31.6万株は将来の買い戻し予約でもある。一方、6月に創業社長の売却(発行済の約2.1%)が公表された——追加が続くかは変更報告書で確認できる。1日の売買代金は6億円前後と薄く、値が飛びやすい小型株(時価総額 約417億円)。

テクニカル

下降トレンドのあとの底ばい圏。7/17の終値5,090円は25日線(5,099円)とほぼ同値=ちょうど攻防の分かれ目。確認は ①25日線の上で数日定着 ②押し安値4,690円(7/1)を守る ③8月中旬の1Q決算 で。200日線(7,558円)はまだ遠く、長期の型は下向きのまま。

※「上がる/下がる」の断定はしません。いまの状態の要約と、確認すべき条件です。詳しくは以下の各章で。

1

なぜ、最高益の会社が高値の6割下にいるのか

一つの悪材料で下げたのではありません。国策×AIへの期待の乗りすぎという土台の上に、「AIは敵かもしれない」という前提の揺らぎ(2月)、控えめな来期予想への失望(5月)、創業社長の株式売却の公表(6月)が重なりました。表はいちばん上が根っこ(土台)で、下へ行くほど新しい話になります。

土台期待の乗りすぎ

株価は1年半で7倍、PERは131倍へ 2024〜2025年

  • 背景は国のサイバー政策ラッシュ(2025/3 産業振興戦略・2025/5 サイバー対処能力強化法・2025/7 国家サイバー統括室・2025/12 新戦略)。「純国産セキュリティの国策銘柄」として買いが集中し、株価は2024年5月の1,900円前後から2025年夏には7,000円前後へ
  • 2025年9月の石破首相の退陣表明(翌営業日+6.7%)から総裁選へ——経済安全保障・サイバーセキュリティ強化を掲げる高市氏への期待が加わり、総裁選勝利の翌営業日10/6はストップ高(+19.6%)、10/16 +15.2%、10/20 +21.5%と連日の急騰に
  • 高値をつけたのは高市内閣が発足した10/21の当日。取引時間中に13,800円をつけたあと、終値は11,830円(▼9.5%)——「期待で買われ、事実の日に天井」の典型的な形。終値ベースのPERは131倍だった
きっかけミュトス・ショック

2/24、IRゼロの日に▼14.2% 前提の争点化

  • 2/24(火)、FFRIは1日で▼14.2%。この日TOPIXは+0.2%の上昇で、会社の開示も一切ない——市場全体でも会社の発表でもない下げ
  • 連休の間に市場で広がっていたのは、米国発の新型AI「クロード・ミュトス」の話題。「AIが防御ソフトの腕を超えるなら、セキュリティ会社の存在価値は?」という不安が、この銘柄の前提を直撃した
  • 一方で「攻撃もAI化するなら防御需要はむしろ増える」「純国産の国策需要は揺るがない」という反論も同時に出て、強気と弱気が真っ二つに割れた。答えの出ない問いが値段を壊した日
二の矢決算のすれ違い

5/15、最高益の決算と「+6.5%」の来期予想 見え方が変わった2日間

  • 5/15(金)15:30、本決算は営業利益+67%で着地・年間配当を14→18円へ増配・3年後の中期計画も引き上げ。実績は文句なしだった
  • しかし同時に出した来期予想は営業利益+6.5%。翌営業日5/18に▼8.9%(TOPIXは▼1.0%)、さらに5/20に▼10.2%——2日で「+67%の会社」から「+6.5%の会社」へ見え方が変わった
  • この会社は毎年予想を低めに置く癖がある(下の②で実数)。ただ、2月に前提が揺れた後の市場は「癖ではなくAI影響の織り込みでは」と疑った。癖か、本音か——外からは判別できないことが売りを呼んだ
三の矢社長の売却

6月、創業社長の株式売却が公表された 変更報告書2本

  • 創業者で社長の鵜飼裕司氏が、5/18から6/16まで毎営業日・計17.5万株(発行済株式の約2.1%)を市場内で売却していたことが、2本の変更報告書(6/2・6/23提出)で公表された。保有割合は23.71%→21.57%
  • 1本目が取引時間中(6/2の11:13)に公開されると当日▼3.8%、翌6/3はTOPIXが+1.8%と上昇する中で▼10.5%。2本目の公開(6/23)の翌日も▼6.5%——6月の下げの多くはこの売却公表と時期が重なっている
  • 売却後も約2割を持つ筆頭株主で、報告書の保有目的欄は「安定株主として長期保有」のまま。ただしどこまで売るのかは外からは読めない。保有が1%動くごとに変更報告書で公表される仕組みなので、次の報告書が出るかが確認手段になる
増幅期待の正常化

PERは131倍→35倍へ、信用の投げも重なった 業績とは無関係

  • 期待の温度を示すPERは、高値の131倍から35.5倍まで剥げた(この間、会社の予想1株利益はむしろ6割増えている)
  • 信用買い残は1年前のピーク114万株49.6万株へ半分以下に。高値づかみの投げ売りが下げを増幅した
  • 1日の売買代金6億円前後の小型株なので、売りが売りを呼ぶと値が飛ぶ——2/24(▼14.2%)や5/20(▼10.2%)の下げ幅は、この構造の産物でもある
たしかめ地合いではない

「市場全体が悪かった」は当てはまらない TOPIXと比較

  • 急落日のTOPIXを並べると——2/24:TOPIX +0.2%の日に▼14.2%/5/18:TOPIX▼1.0%の日に▼8.9%/6/3:TOPIX +1.8%の上昇日に▼10.5%。下げの主因は市場ではなくこの銘柄固有
  • 逆に7/17(▼7.8%)は市場全体の急落日(TOPIX▼2.7%)。この日は「地合い×ベータの高さ」で、固有の悪材料は確認できない
  • 原因が固有だとはっきりしている分、見るべき場所も絞れる——AIを巡る前提と、決算の進捗。この2つに尽きる
いまの位置
この下落は業績の悪化が原因ではありません「AIは敵か味方か」という前提の揺らぎ期待の正常化が正体です。株価は、2本目の売却報告が公開された週の6/26に4,395円(取引時間中)をつけて下げ止まり、7月は個別の開示がない日に+8.7%(7/2・TOPIX +0.1%)、+5.4%(7/15)と固有の反発が出始めました。折しも報道は「AIがサイバー攻撃を速く・巧妙にする」——攻撃のAI化は防御需要の追い風という側に傾きつつあります。ただし7/17の全面安で5,090円まで押し戻され、綱引きはまだ決着していません。次の答えは8月中旬の1Q決算です。
順番に注意 — この銘柄の材料は「IRの外」から来る

① 決算への反応は「翌営業日」に出る
FFRIの決算は15:30(取引終了後)の開示が基本です。5/15(金)の本決算への反応は、翌営業日5/18(月)の▼8.9%でした。発表当日の値動きだけを見ると読み違えます。

② 最大の材料は、IRにも国内ニュースにも最初は出ない
2/24の▼14.2%は、開示がゼロの日に起きました。伝わる順番は——海外のAIの新展開 → SNS・掲示板 → 東京市場の株価。国内の解説報道は最後で、NHKがクロード・ミュトスの特集を放送したのは5ヶ月後の7/15です。

③ 6月の急落の引き金も、会社のIRではなかった
引き金は社長個人の変更報告書(EDINET・株式売却の公表)でした。「適時開示だけ見張っていれば大丈夫」が通用しない銘柄——見る場所は「適時開示・EDINET・海外のAIニュース」の3つです。

2

会社は大丈夫なのか(決算と、その土台)

短期の値動きから離れて、会社そのものを見ます。FFRIセキュリティは純国産にこだわるサイバーセキュリティの研究開発企業——主力はパソコンを守るソフト「FFRI yarai」(61.9万ライセンス・約4割が官公庁)と、政府向けのナショナルセキュリティ・サービス(経済安全保障の研究開発プログラムなど)。東証グロース上場・連結236名のエンジニア集団です。数字の出どころは決算発表(適時開示)の実数です。

売上高
43.5億
→ 予想 51.4億
2026年3月期実績(+43%)→ 2027年3月期会社予想(+18%)
営業利益
13.6億
→ 予想 14.5億
実績+67%・利益率31.4% → 予想+6.5%・28.3%
純利益
11.0億
→ 予想 11.3億
実績+60%(EPS 139.06円)→ 予想+3.0%(EPS 143.25円)
配当
18円
ROE 33%
14円から増配(来期も18円予定・配当性向12.6%)

12年の歩みと、その中身(営業利益)

  • 2015年最初のブーム ── 上場翌年の2015年6月、日本年金機構への標的型サイバー攻撃で約125万件の年金情報流出が公表され(6/1)、セキュリティ対策の特需思惑が沸騰(翌6/2に+14%)。翌月の7/23には18,500円(取引時間中・いまも上場来高値)へ——事件公表前の約4,800円から6週間で3.8倍。しかし翌2016年3月期は営業赤字に転落して期待は崩壊し、株価は2022年5月に887円(高値から▼95%)まで沈んだ。「事件・テーマで買われ、業績で答え合わせされる」型は10年前から変わっていない。
  • 2022〜2026年3月期実力で再浮上 ── 営業利益 1.0億→2.0億→5.0億→8.2億→13.6億円。国の経済安全保障プログラム(Kプログラム)参画と政府需要の拡大で、4年で13倍・直近3年で6.8倍。
  • 2027年3月期・予想14.5億円(+6.5%)── ただし同日に3年後までの中期計画を引き上げ(2029年3月期に営業19.5億円)。1年前に出した2027年3月期の計画(11.1億円)より+31%高い水準に置き直している。

成長の中身──来期計画は政府向け(ナショナルセキュリティ・サービス)が+37%、その他サービス+33%に対し、製品は+0.6%と二極。全体の「+18%」という平均だけ見ると実像を見誤ります。製品の業種別では官公庁ライセンスが増える一方、金融は大口契約の満了で半減——成長のエンジンは政府需要に一本化しつつあるのが現在地です。

利益率が31.4%→28.3%へ下がる予想の理由 ── エンジニア増員・待遇向上の人件費と、国の研究開発案件の一部が「利益排除」(ほぼ原価のみで請求。代わりに研究成果は自社の知財になり、将来製品化できる)であるため。目先の利益率を落として将来の資産を仕込む構図で、これ自体は悪い話ではありません(各数値は決算短信・補足説明資料より。下の出典参照)。

知っておきたい3つのこと

  • 1予想を低めに置き、大幅に上回って着地する癖
    期初予想→実績(営業利益):2024年3月期 1.9億→5.0億(+160%)/2025年3月期 5.2億→8.2億(+59%)/2026年3月期 9.1億→13.6億(+49%)。しかも直近2年は期中に一度も修正せず期末にまとめて上振れ——今年2/12の3Q決算では「9ヶ月で通期予想の99%を達成」が公表されていた。会社自身も「計画上は保守的に見積もっていた」と資料に明記。「来期+6.5%」はこの癖とセットで読む数字
  • 2答え合わせは四半期決算でしかできない
    月次KPIのない銘柄。予想の低め置きが「癖」か「本音」かは、1Q決算(例年8月中旬・15:30開示)の進捗率が最初の判定材料になる。前年の1Qは売上進捗21%・その前年は17%だった。
  • 3注意点
    創業社長の株式売却が公表済み(5〜6月に発行済の約2.1%・上の「三の矢」参照)——追加売却が続くかは変更報告書で確認 ②値動きが荒い——1日で▼14.2%(2/24)や▼10.5%(6/3)が現実に起きる ③最大の材料(AIの新展開)はIRの外から来る=開示の監視だけでは足りない ④配当利回りは0.35%と薄く、株主還元で下値を支えるタイプではない。

この強さを1本の鎖にすると(成立を確認する順番)

国の制度・予算(強化法 10月施行) 政府向け案件の受注(計画+37%) エンジニアの確保(採用が制約) 売上+18%計画の達成 1株利益の成長

この鎖のどこかが切れると、下の「前提」が崩れます。確認の場は四半期決算(政府向け売上の進捗)と政策ニュース(制度整備の進み方)。会社は「エンジニアの人数がボトルネック」と明言しており、採用・離職の数字も決算資料で毎年開示されます。

その数字の土台にある「前提」──これが生きている限り強さは続く

短期の上げ下げの土台にある「前提」です。この前提が生きている限り会社の強さは続き、崩れたら話が変わります

成立条件と崩壊条件
この会社の強さが続くために必要な前提と、崩れる合図
前提 1国策需要

政府のサイバー安全保障需要が続く

  • サイバー対処能力強化法が2026年10月から順次施行。参画する国の研究開発プログラム(Kプログラム「先進的サイバー防御」)は予算290億円以下・5年の枠組み
  • 崩れるサイン:四半期決算で政府向け売上が失速/「案件の一巡」に類する会社コメント/政府予算の縮小
前提 2AIは味方

攻撃のAI化は、防御需要を増やす側に働く

  • 足元の報道は「AIがサイバー攻撃を速く・巧妙にする」——攻撃が強くなるほど防御にお金が回る、はこの会社に追い風の構図。FFRI自身も国のプログラムでAI防御技術(次世代AIを使った侵入検知など)を研究開発中
  • 崩れるサイン:FFRI製品がAIに突破される実例の公表/AIネイティブな防御製品を持つ海外勢・新興が国内の官公庁需要を取り始める
前提 3人材

エンジニアを採り続けられる(会社が認める唯一の制約)

  • 国内のセキュリティ人材は約11万人不足とされる中、新卒中心に採用(26年4月入社18名・中途11名・離職率6.5%)。売上の上限は人数で決まる労働集約の面がある
  • 崩れるサイン:離職率の上昇/採用数の未達が決算資料に現れる
遠い脅威構造変化

いちばん怖いのは「セキュリティそのものがAI基盤に吸収される」世界

  • 2/24が示したのはこの脅威の存在。防御ソフトという製品カテゴリー自体が、汎用AIの一機能になってしまう未来が来るなら、前提1〜3が全部無事でも話が変わる
  • こうした変化はゆっくり現れる。先に効くのは製品ライセンス数の伸び(年1回開示・直近61.9万で増加中)と官公庁の調達方針——「純国産」という買う理由が残るかどうか
🎤 現地メモ — 株主総会で経営陣が語ったこと(2026/6/26・筆者出席)

このページの筆者は、6/26の定時株主総会と、そのあとの事業説明会に株主として出席しました。開示資料には載らない経営陣の肉声を、当日のメモから要約します(一言一句の引用ではありません。正確な数値・文言は会社の公式開示をご確認ください)。

  • 会社の自己定義——「普通のサイバーセキュリティ会社ではなく、サイバー安全保障の会社」。当面の顧客は国。その先に重要インフラ・大企業、ゆくゆくは中小・個人へ広がる市場で「海外勢に取られずトップを取る」のが戦略の核、という説明でした。
  • 利益率低下の理由を、会社自身がはっきり説明した——国の研究開発案件の「利益排除」の縛り(このページ②で見た仕組み)について、「利益を出そうと思えば出せるが、制度上あえて抑えられている」趣旨の説明。研究に人を投じるほど短期の利益は重くなる構造で、来期予想「+6.5%」の読み方と整合します。
  • 最大の課題は「人材」だと明言——需要(引き合い)は人員確保のペースを超えている。採用を前倒しして非連続な成長を目指す。子会社FFRIセキュリティワークスで実務領域(脆弱性診断・運用)まで裾野を広げるのはこのため。
  • AI×サイバーは「脅威ではなくチャンス」——「この変化は研究現場では4年前から起きていた」という受け止め。AI関連技術の事業化は社内目標2029年、ただし「待っていていいのか」という危機感から前倒しに意欲。2/24に市場が突きつけた問いへの、会社側の現時点の答えです。
  • 「会社ごと海外に買われるリスク」への株主の懸念には——安全保障案件は会社・個人ともクリアランス審査の対象で「相当気をつけている」、外国資本に買われると問題だという認識は当局とも共有している、という回答。敵対的買収への防衛策は現状なし(社長の保有比率が高いことにも言及)。
  • 株価・還元について——「株価は重大な関心事。まず業績を上げて企業価値を高めることが最重要」。配当は安定的・継続的が基本(今期4円増配の18円)で、まだ成長過程との位置づけ。
  • ついでの豆知識——社名FFRIは「Fourteenforty Research Institute(1440技術研究所)」。創業者の鵜飼社長がスキー・スノーボードの4回転=1440度(当時誰もできなかった技)にちなんで「誰もやらない技術に挑戦する」と名づけたそうです(2007年設立)。
3

いまの株価は割高か、割安か(PERの推移)

PER=株価が「1年分の利益」の何倍まで買われているか。数字が大きいほど、期待が多く乗っている状態です(その時点で公表されていた会社予想の1株利益で計算)。

PERの推移(直近2年・日次) 2024-05 → 2026-07-17

計算:その日の終値 ÷ その時点で公表済みの会社予想1株利益(予想EPSの公表を確認できる2024年5月以降)。引け後の開示は翌営業日から反映——5/15の本決算(新しい予想143.25円)は5/18から分母に適用。

いま
PER 35.5倍
2026-07-17(終値ベース)
直近2年の中央値
55.6倍
およそ30〜144倍のレンジで推移
高値の日(2025/10/21)
131倍
期待がいちばん膨らんだ瞬間(終値ベース)

読み方 ── 高値の日は131倍まで期待が膨らみ、2月のクロード・ミュトス・ショックと5月の決算で31倍(6/26)まで剥げ、いまは35.5倍。これは再評価が始まる前の2024年春とほぼ同じ温度です。この間に会社の予想1株利益は54.76円→143.25円へ2.6倍になったので、「期待の温度は一周して元に戻り、利益だけが2.6倍になった」のが現在地——「高値から6割下がった」と「割安」は別の話で、35倍という水準自体、市場平均より高く「成長の継続」を前提にした値段です。

いまの株価に織り込まれている前提

いまの5,090円(PER 35.5倍)は、「政府需要は続く。製品が横ばいでも、国策サービスが+37%で伸びる」という前提を織り込んだ値段です。前提のくわしい中身は上の②で見た3つ。

崩れる合図──8月中旬の1Q決算で政府向け売上の進捗が弱い(過去2年の1Q売上進捗は17〜21%が目安)/FFRI製品がAIに突破される実例/製品ライセンス数の減少。どれかが出たら、このページの見立ては見直しです。

4

テクニカルと需給の現在地

下値の目安・窓・移動平均線をチャートに示しました。

下値の目安とサイン(日足75本) 〜2026-07-17

↓印=窓開け(前日から飛んで下げた日)。縦軸=株価(円)・横軸=日付。線の意味は下の説明と色で対応。

━ 青い線=25日線(5,099円)7/17の終値5,090円はほぼ線上=ちょうど攻防の分かれ目。上で定着すれば底ばい脱出の第一歩、下に離れれば調整継続
━ 赤い点線=押し安値(4,690円)7/1の安値。7月の反発の起点で、ここを終値で割ると短期の流れが下向きに戻るサイン
↓印=窓を開けた下落(4/10・4/13・5/18・7/17)5/18は決算の翌営業日(ガイダンス失望)。7/17は市場全体の急落日(TOPIX▼2.7%)=個別の悪材料は確認できない
━ 灰色の点線=年初来安値(4,395円・6/26)下値の最後の目安。ここを割ると、目安になる節が2024年の水準まで無くなる(強い警戒)
200日線は7,558円=まだ遠い長期トレンドの型は下向きのまま。「底ばいからの反転試し」の段階で、上昇トレンド入りとは呼べない(フル指標版で確認できます)
昨年来高値 13,800円(2025/10/21・取引時間中)大きな上の節。なお上場来高値は2015年の18,500円(同・取引時間中)で、これは10年前の思惑相場の跡

信用残の1年

信用買い残(あとで売る予約)/信用売り残(あとで買い戻す予約)の推移

信用残(週次)と売買代金 2025-07 → 2026-07-10

左目盛:万株(線)。下の棒:1日の売買代金(億円)。信用残は週1回の公表。

━ 赤い線=信用買い残(あとで売る予約)1年前のピークは114万株(2025/7/11)。急落のたびに投げ売りで減り続け、いまは49.6万株(7/10)=ピーク比▼57%・1日の出来高の約4.1日分。高値づかみの整理は大きく進んだ状態
6月は「社長の売却」という供給もあった創業社長が5/18〜6/16に毎営業日6千〜1.4万株・計17.5万株を市場内で売却(変更報告書より)。報告がカバーするのは6/16まで——その後も保有が1%動けば次の変更報告書で公表される
━ 青い線=信用売り残(あとで買い戻す予約)31.6万株。信用倍率は1.6倍とよくある範囲(15倍以上で「買いが重い」の目安)。売り残は株価が上がると買い戻しを迫られる「将来の買い予約」でもある
棒グラフ=売買代金ふだんは5〜7億円/日と薄め。決算翌日や急落日は3〜4倍に膨らむ。時価総額 約417億円の小型株で、値が飛びやすい——▼14.2%(2/24)のような日はこの構造の産物でもある

まとめ ── 需給の重し(信用買い残)は1年かけて半減し、軽くなった。一方でトレンドの型はまだ下向きで、いまは「25日線を挟んだ攻防」。全体の結論は最終章「総合判断」へ。

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総合判断と、今後の注目点

ここまでの整理 ── ファンダメンタルズ:3年連続の大幅上振れ着地・営業利益は3年で6.8倍。来期+6.5%は「低めに置く癖」込みで読む数字/需給:買い残はピーク比▼57%と整理が進み、信用倍率1.6倍と軽い/テクニカル:底ばい圏で25日線とちょうど攻防中。200日線は遠く、長期の型はまだ下向き。そのうえで、上と下、両方の「確認のサイン」を置いておきます。

✅ 反転が「本物」と確認できるサイン(上向き)

  • 25日線(5,099円)の上で数日定着し、押し安値4,690円を割らずに8月の決算を迎える
  • 8/13ごろの1Q決算(過去5年は8/10〜8/13・15:30開示)で、政府向け売上の進捗と増収が確認できる(過去2年の1Q売上進捗は17〜21%が目安)
  • 信用買い残の減少が続く(毎週公表。重しがさらに軽くなる)
  • 制度の実装が進む——サイバー対処能力強化法(10月順次施行)に向けた政府の制度整備・調達のニュース

⚠ 調整継続・警戒のサイン(下向き)

  • 押し安値4,690円(7/1)を終値で割り込む
  • 年初来安値4,395円(6/26)割れ=下値の目安を失う(強い警戒)
  • 1Q決算で政府向け売上が失速・「案件の一巡」に類する会社コメント
  • 社長の追加売却の公表(次の変更報告書)が続く
  • FFRI製品がAIに突破される実例の公表(この銘柄最大のテールリスク)
  • AIの新展開による2/24型の急落——開示ゼロでも起きることが実証済み。この銘柄を持つなら織り込んでおくべき値動きの癖

📅 次に見るカレンダー

  • 8/13ごろ:第1四半期決算──「+6.5%は癖か本音か」の最初の答え(過去5年の発表は8/10〜8/13・前年は8/13の15:30開示→反応は翌営業日。確定日は会社発表で更新)
  • 同業の決算が先に見える:デジタルアーツ(2326)=7/31ごろ・ソリトンシステムズ(3040)=8/7ごろ・トレンドマイクロ(4704)=8/10ごろ・サイバーセキュリティクラウド(4493)=8/14ごろ(いずれも過去実績からの予測・確定日は各社発表)——法人・政府向けセキュリティ需要の先行指標になる。なお国産大手の一角だったラックは2025年にKDDIの完全子会社となり上場廃止
  • 毎週:信用残の公表+変更報告書(社長の追加売却が出るか)
  • 10月〜:サイバー対処能力強化法の順次施行(政府向け需要の制度的な土台)
  • 11月中旬:第2四半期決算(前年は11/13)・本決算は例年5月中旬(過去3年は5/14・5/14・5/15)
  • 随時:AIの新展開(海外発・IRの外から来る)——このページの見立てが最も揺さぶられる変数

🧾 ニュースの見立てと答え合わせ — FFRIセキュリティ(3692)

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出典・参考資料

このページの「なぜ」は、以下の適時開示と市場データをもとに、アルミナが整理・解釈したものです。

出典をすべて見る(タップで開く)

FFRIセキュリティの適時開示(一次情報)

  • 2025/5/14 2025年3月期 決算短信──2026年3月期の期初予想(営業9.1億円)の出典
  • 2026/1/15 子会社設立に関するお知らせ──セキュリティ教育・診断に特化した「FFRIセキュリティワークス」設立
  • 2026/2/12 2026年3月期 第3四半期決算短信──9ヶ月で営業利益9.0億円(当時の通期予想の99%)の出典
  • 2026/5/15 2026年3月期 決算短信・決算短信補足説明資料──実績(売上43.5億・営業13.6億)・来期予想(売上51.4億・営業14.5億)・セグメント別計画(政府向け+37%/製品+0.6%)・中期経営計画の引き上げ・Kプログラムと「利益排除」の仕組み・採用と離職率・政策年表の出典
  • 2026/5/15 期末配当予想の修正(増配)に関するお知らせ──年間配当14→18円の出典
  • 2026/6/2・6/23 変更報告書(大量保有報告・提出者:鵜飼裕司・EDINET)──社長の株式売却(5/18〜6/16に計17.5万株・保有割合23.71%→21.57%・市場内・毎営業日の明細)の出典
  • 2026/6/26 定時株主総会・事業説明会──「現地メモ」欄の出典(筆者が株主として出席した際のメモの要約。公式の議事録・開示ではありません)
  • FFRIセキュリティ 公式サイト(決算短信・説明資料の原本は公式サイトIRページから)

データの出典

  • 株価・出来高・売買代金・信用残・財務数値・TOPIX:証券取引所が公表する市場データ・各社の決算資料をもとにアルミナが整備したデータベース
  • PER・移動平均・RSI等の指標:上記データからアルミナが算出(計算方法は各章に記載)
  • 開示の時刻(15:30等):適時開示の公表時刻の実データ(「翌営業日に反応」の判定に使用)
  • 政治日程(2025年の総裁選・内閣発足)・2015年の日本年金機構の情報流出:当時の公表日に基づく公知の事実(株価の反応は上記データベースで確認)
  • 2/24の急落の背景(新型AIの話題):当時の市場での公開の議論・その後の報道(7/15 NHK特集ほか)に基づく整理。会社の開示に起因しない値動きであることは、開示の実データ(当日の開示ゼロ)とTOPIX(+0.2%)で確認

決算数値は適時開示の実数。ライセンス数・人員数は決算短信補足説明資料の公表値です。

このページの約束:①嘘を書かない ②煽らない ③外れる条件(見直しのサイン)を必ず書く ④どこにも誘導しない。「上がる/下がる」は言い切らず、しくみ・事実・見直しの条件・見ておく場所だけをお伝えします。

Alumina — 投資に、根拠を。