銘柄レポート
IHI(7013)株価分析 機械
コロナ期の安値150円(調整後)から、2026年2月の高値4,698円まで約31倍。 防衛・航空エンジンを柱に売上も利益も過去最高を更新し、今期は「営業利益+45%」 を会社が予想する。 それでも株価は高値から▼39% の2,878円——「利益は最高なのに、株価は戻らない」のはなぜか 。数字の中身を、この1ページで整理する。
IHIの今と見どころ 📊 株価データ:2026-07-24終値 ✍ 見立て・本文:2026-07-24執筆(週1+イベント時更新) 次回の本文更新:8/1(土)ごろ
30秒だけの人へ
本業は航空エンジン・防衛・原子力・プラント の重工大手。防衛予算の拡大(GDP比1%→2%)とミサイル増産・次期戦闘機GCAPを追い風に、売上・営業利益・純利益とも過去最高 で着地し、今期も3期連続の最高益 を会社が予想。株価はコロナ安値150円(調整後)から2月高値4,698円 まで約31倍になった。
今期予想は営業+45%(2,400億円) と派手だが、純利益は+2%(1,650億円) しか増えない——前期の純利益に税効果という一回きりの押し上げ(+482億円) が入っていた反動。さらに営業利益には計画的な資産売却益 も混ざる。「営業+45%」と「EPS+2%」のどちらを物差しにするかで、割高感が全く変わる 銘柄。
焦点は8月上旬の1Q決算=事業そのものの増益(+293億円計画)が出ているかを確かめる日 。株価の物差しは25日線(2,803円)と戻り高値3,071円(7/6)、下は年初来安値2,245円(6/11)。
いまの状態
業績 受注1兆9,547億円・売上1兆6,434億円・営業1,655億円(率10.1%)・純利1,609億円——すべて過去最高。今期も売上1兆8,300億円・営業2,400億円と3期連続最高を予想(ただし純利は+2%)
株価の流れ 2/10の高値4,698円(3Q決算の日・取引時間中)から6/11の2,245円まで▼52%調整→7月は2,878円まで戻し、25日線の上下を行き来
需給 信用買い残1,937万株はピーク(2,671万株・5/15)から▼27%。ピークは高値の2月ではなく下落中の5月 =下げを買い向かった分の整理が進行中。出来高比では約1.6日分と重くない
割安度 予想PER 18.6倍(EPS 155.09円)。2024年5月は10倍前後・2月の高値では38倍(終値ベース)——この2年でPERの水準そのものが切り上がった(リレーティング) 銘柄
読みたいところへ
📝 今週なにが変わったか (初回・毎週土曜に追記)
📌 今週の要点: このページは今回が開設。市場全体が荒れた週(7/17にTOPIX▼2.7%)に▼5.1%まで売られたが、週後半は2,889円(7/23)まで戻した。この欄には毎週土曜、変化と答え合わせを追記していく。
① 新しく分かったこと
➡️ 7/22、フィンランドKuva Spaceと衛星コンステレーションの構築で協力と発表
ハイパースペクトル衛星のデータを防衛・民間の両方(デュアルユース)で使う枠組み。宇宙は中期計画で「育成事業」に位置づけられた分野。
→ 解釈:業績への影響は現時点で数字にならない。方向性(安全保障×宇宙)の確認材料。
② 見立ては変わったか → 🟢 変更なし (開設初回のため、見立ての起点はページ本文の通り)。
③ 🔒 確認条件(きょうから凍結・次回更新で答え合わせ)
(a) 8月上旬の1Q決算 (過去2年は8/6・13:00開示。日付予測は上のカレンダー欄)で、営業+45%計画に対する進捗——特に「事業の増益+293億円」の中身(防衛・民間エンジン)が出ているか
(b) 25日線(2,803円)の上を維持できるか
(c) 7/6の戻り高値3,071円を出来高を伴って超えられるか
④ 📅 次に見るもの ——8月上旬 1Q決算(13:00・場中開示→当日午後に反応が出る癖) ・7/30 FOMC/日銀・毎週の信用残。
🔖 このページは毎週土曜に更新されます
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📅 これからの予定 — IHI(7013)に関連するもの
未来のことで確定している数少ない事実=「いつ・何が出るか」。自社の予定だけでなく、市場全体の経済イベントもここに出ます。日付はすべて日本時間・日をタップすると詳細が表示されます。
7/30(木) ★FOMC(米金融政策) 結果発表 市場全体 日本時間 3:00 結果発表・3:30 議長会見 東京が反応する日: 7/30(木)
7/30(木) ★日銀 金融政策決定会合 市場全体 結果は7/31昼ごろ・総裁会見15:30 東京が反応する日: 7/31(金)
8/5(水)ごろ 三菱重工業(7011) 1Q決算(予測日) 同業・予測 過去2年は8/5・8/6の13:30(場中)開示。防衛・重工セクターの需給と評価に波及することがある。会社が正式発表したら確定日に置き換えます
8月上旬 IHI(7013) 1Q決算発表(予測日) 自社・予測 過去2年の同四半期は8/6・13:00の場中開示(=反応は当日の午後から)。会社が正式発表したら確定日に置き換えます
8/6(木)ごろ 川崎重工業(7012) 1Q決算(予測日) 同業・予測 過去2年はいずれも8/6・11:30(場中)開示。重工3社の決算が同じ週に集中する
8/6(木)〜8/7(金)ごろ 三井E&S(7003) 1Q決算(予測日) 同業・予測 過去2年は8/6・8/8の14:30(場中)開示。防衛(艦艇エンジン)関連の同業
8/7(金) ★米雇用統計(7月分) 市場全体 日本時間 21:30 東京が反応する日: 8/10(月)
8/12(水) ★米CPI(消費者物価・7月分) 市場全体 日本時間 21:30 東京が反応する日: 8/13(木)
8月末ごろ 防衛省 概算要求(2027年度予算・例年8月末) 防衛シグナル 来年度の防衛予算の要求額と重点項目が出る。防衛費GDP比2%路線の進み具合を確かめる定点。日付が固まったら置き換えます
10月下旬 米防衛大手の3Q決算(ロッキード・ノースロップ・RTX) 海外・参考 直近のQ2決算は7/21〜24に通過済み(NOC 7/21・LMT 7/23・RTX 7/24)。米防衛の受注動向は世界の防衛支出の温度計として参考になる
速報 直近の動き — IHI(7013)に関連するかもしれないニュース
終値(調整後)
2,878.5円
2026-07-24(前日比▼0.4%・TOPIX騰落率との差+0.7pt)
上場来高値からの下落
▼38.7%
高値4,698円(2026/02/10・取引時間中)から
直近2日の値動き
7/23+4.0% 7/24▼0.4%
直近2営業日の前日比
信用倍率
48倍
買い残1,937万株/売り残40万株(7/17公表・週次)
3つの視点で見る(2026-07-24時点)
ファンダメンタルズ
前期は受注・売上・営業利益・純利益すべて過去最高。今期も営業2,400億円(+45%)と3期連続最高を予想。 ただし純利益は+2%どまり ——前期の純利益には税効果(+482億円)という一回きりの押し上げが入っていた反動で、EPSは151.88円→155.09円とほぼ横ばい。営業増益+744億円の中身も、事業の実力+293億円に計画的な資産売却 が上乗せされた構成。実力の伸びは「+293億円」の方で追うのが安全。
需給
信用買い残1,937万株はピーク(2,671万株・5/15)から▼27%。 買い残のピークが高値の2月でなく下落中の5月 に来ている=下げ局面を買い向かった資金が多かった証拠で、その整理が6月から続いている。1日の出来高約1,200万株に対して約1.6日分と回転は軽い (倍率48倍は売り残の少なさによる見かけで、大型株は回転日数で見る方が実態に合う)。1日の売買代金は平均490億円(直近60日)と厚く、板の薄さの心配はない。時価総額 約3.1兆円。
テクニカル
2月高値4,698円→6/11安値2,245円の▼52%調整を経て、7月は反発基調。 いまの2,878円は25日線(2,803円)の上・7/6の戻り高値3,071円の下。確認は ①25日線の上を維持 ②戻り高値3,071円超え ③8月上旬の1Q決算 で。
※「上がる/下がる」の断定はしません。いまの状態の要約と、確認すべき条件です。詳しくは以下の各章で。
1
なぜ、150円だった株が4,698円になり、そこから4割下げたのか
一つの好材料で上がったのではありません。コロナで航空エンジン需要が消えた谷 を土台に、防衛予算の倍増方針 (2022年12月)、業績のV字回復と株式分割 (2025年)、輸出ルール緩和とミサイル増産 (2026年)が順に重なりました 。表はいちばん上が根っこ(土台)で、下へ行くほど新しい話になります。
土台 コロナの谷
航空エンジンの需要が消え、150円まで売られた 2020〜2022年
IHIの収益柱のひとつは民間航空エンジン——コロナで世界の空の便が止まり、整備需要も蒸発。2020年に150円 (調整後・当時の実際の値では1,050円前後)まで売られた
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻で防衛が世界的なテーマになり、同年615円まで回復。ただしこの時点ではまだ「テーマ」の域を出ない
実はコロナ前の2016年3月期にも、民間エンジンや大型案件の損失で営業利益が220億円まで急減している(純利益15億円)。「大きな谷を掘っては直す」を繰り返してきた会社 で、この谷の深さが後の上昇の出発点の低さになった
きっかけ 防衛予算GDP2%
2022年12月、防衛費「5年で倍増」が決まる 2024年に年間3.5倍
2022年12月の安保3文書で、防衛費をGDP比1%→2%へ 引き上げる方針が閣議決定。IHIは戦闘機エンジン・ミサイル・ロケットの国内中核メーカーで、三菱重工・川崎重工とともに「防衛株」の代表格になった
2024年、株価は390円→1,354円と年間で約3.5倍 。ところが同じ2024年3月期、IHIは民間エンジン(PW1100G-JM)の追加検査プログラム費用などで営業▲701億円の大赤字 だった
つまりこの上昇は「その期の利益」ではなく「防衛予算という将来」を買った動き ——PERという物差しが利かない期間がここから始まった
二の矢 V字回復と分割
2025年、利益が期待に追いつき、分割で個人が入った 10月に出来高10倍
2025年3月期は営業1,435億円へV字回復(前期▲701億円)。「期待先行」だった株価に利益の実体が追いついてきた
8/6、1Q決算と同時に1:7の株式分割 を発表(10月効力)。最低投資金額が約250万円→約36万円に下がり、10月の1日平均出来高は4,300万株と分割前の10倍 に膨らんだ
個人資金の流入で10月に3,268円(調整後)まで上昇。11月の2Q決算では今期予想を上方修正(EPS 112.85円→117.49円)
三の矢 輸出解禁と増産
2026年2月、決算の日に高値4,698円——そして反落 出来高7,660万株
年明けから防衛関連の材料が続き、2/10の3Q決算(13:00・場中開示)の日に出来高7,660万株を伴って取引時間中4,698円の上場来高値 。当日は+4.9%で引けた
しかし2営業日後の2/12は▼7.8% (TOPIXは+0.7%の日)——決算内容に驚きはなく、高値をつけた日が当面の天井 になった
5月末には装備移転「5類型」撤廃の政府決定 が報じられ、IHIのミサイル部品増産も伝わったが、株価の調整はその後も続いた——材料の出る場所と株価の反応する場所がズレ始めた のがこの時期
増幅 純利の壁
「営業+45%」の決算で、株価は下げた ▼52%調整の終盤
5/8(13:00・場中)、本決算と今期予想を発表。受注1兆9,547億・売上1兆6,434億・営業1,655億・純利1,609億——すべて過去最高 。今期も営業2,400億円(+45%)と3期連続最高益の予想。それでも当日は+0.5%止まり
翌営業日5/11は▼6.2% (TOPIXは+0.3%)。理由は予想の中身にある——純利益は1,650億円で+2%しか増えない 。前期の純利益には収益力向上に伴う税効果+482億円 という一回きりの押し上げが入っており、その反動でEPSは155.09円とほぼ横ばい
さらに営業増益+744億円の内訳は、事業の増益+293億円に計画的な資産売却 や前期費用の反動が乗った構成(会社の説明資料に明記)。「見出しの+45%」と「実力の+293億円」の距離 に市場が気づき、決算後4日で▼12%。6/11の2,245円で調整が一巡した
たしかめ 固有か地合いか
大きく動いた日を、市場全体(TOPIX)と並べる 連動も固有も両方ある
固有の日 ——高値の反落2/12(▼7.8%・TOPIX+0.7%)、決算翌日5/11(▼6.2%・TOPIX+0.3%)。どちらも「純利の壁」と出尽くし という自社の理由で動いた
地合いの日 ——7/17は市場全体の急落日(TOPIX▼2.7%)に▼5.1%。時価総額約3.1兆円・指数に組み込まれた大型株なので、市場全体が大きく動く日は一緒に動く
つまりこの銘柄は「防衛セクターの物語」と「日経・TOPIXの地合い」の両方に足を置いている 。固有材料の日はIR・報道を、地合いの日は指数を見る——原因の切り分けがそのまま対処法になる
いまの位置
この2年の上昇は防衛予算の拡大という国の決定 を起点に、業績のV字回復・株式分割・輸出ルール緩和 が積み上げたものです。2月の高値4,698円は決算の日の出来高クライマックス で当面の天井になり、6/11の2,245円まで▼52%調整。7月は3,071円 (7/6)まで戻したあと全体急落(7/17)で押され、いまの2,878円は25日線の上。次の答えは8月上旬の1Q決算——「事業の増益+293億円」計画が実際に出ているかを確かめる日です 。
順番に注意 — この銘柄は「決算が昼に出る・見出しと実力がズレる」
① 開示は13:00、反応は当日の午後から IHIの決算開示は13:00(昼休み明け直後)が定例です。2/10の3Q(当日+4.9%で高値)も5/8の本決算(当日+0.5%→翌日▼6.2%)も、当日の午後にまず反応が出て、翌日に本音が出る という2段構えでした。引け後開示の会社(翌日反応)とは時間の流れが違います。
② 「営業+45%」と「EPS+2%」——どちらも本当 今期予想は営業2,400億円(+45%)と純利1,650億円(+2%)が同居します。前期の純利に税効果+482億円という一回きりの押し上げが入っていたためで、どちらの数字を物差しにするかで割高感が全く変わります 。株価はEPSの方(PER 18.6倍)を見て動いている、というのがこの2年の実測です。
③ 営業利益には資産売却が混ざる 前期の営業1,655億円には資産売却益+224億円が、今期の2,400億円にも「大規模な計画的資産売却」が含まれます(会社の説明資料に明記)。事業の実力は「事業の増益+293億円」の行 で追う——決算説明資料の増減要因の図を見る癖をつけると、この銘柄は読みやすくなります。
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会社は大丈夫なのか(決算と、その土台)
短期の値動きから離れて、会社そのものを見ます。IHIは1853年(嘉永6年)の石川島造船所を起源とする重工大手——航空・宇宙・防衛 (戦闘機エンジン・ミサイル・ロケット)、資源・エネルギー (原子力・アンモニア燃焼)、社会基盤 (橋梁・シールド)、産業システム (車両過給機ほか)の4事業。東証プライム上場・3月決算(IFRS)。数字の出どころは決算短信・決算説明資料の実数です。
売上収益
1兆6,434億
→ 予想 1兆8,300億
2026年3月期実績(過去最高) → 2027年3月期会社予想(+11%)
営業利益
1,655億
→ 予想 2,400億
実績・率10.1% → 予想+45%・率13.1%(うち事業の実力増益は+293億)
純利益
1,609億
→ 予想 1,650億
実績は税効果+482億込み(EPS 151.88円)→ 予想EPS 155.09円(+2%)
配当
20円
→ 予想 23円
分割調整後ベース(実額は中間70円=分割前+期末10円)→ +15%の増配予想
直近4年の歩みと、その中身(営業利益)
2023年3月期 819億円 ── ウクライナ侵攻後の防衛テーマ化が始まった年。まだ利益は「ふつうの重工」の水準。
2024年3月期 ▲701億円の大赤字 ── 民間エンジンPW1100G-JMの追加検査プログラム費用を一括計上。株価が年間3.5倍になったのと同じ期に、損益は最悪だった——期待と利益が最も乖離した年 。
2025年3月期 1,435億円へV字回復 ── 検査費用の峠を越え、防衛・原子力の受注が伸び始める。営業利益率8.8%。
2026年3月期 1,655億円(率10.1%)・全項目過去最高 ── 受注1兆9,547億円(原子力の大型案件など)・ROE28.4%・D/Eレシオは1.01→0.72倍へ改善。ただし営業には資産売却益+224億円、純利には税効果+482億円が入っており、「最高益」の一部は一回きりの要素 。
今期(2027年3月期)予想の読み方 ── 営業2,400億円(+744億円)の内訳は、会社の説明資料によれば事業の増益+293億円 (防衛・民間エンジン整備の採算改善など)+前期の構造改革費用の反動+計画的な資産売却で、為替は▼62億円のマイナス(前提145円/ドル・感応度20億円/円)。地政学リスク等のバッファも一定程度織り込み済み と会社は説明している。実力の伸びを見るなら「+293億円」、達成の危うさを見るなら「為替」と「資産売却の実行」を追う。
知っておきたい3つのこと
1 防衛は「受注→売上」に時間差がある 防衛装備は受注から納入まで数年かかる長期契約で、いま取った受注が売上になるのは先 。受注高(前期1兆9,547億円・過去最高)と受注残が先行指標、売上・利益は遅行指標という時間差の構造。株価は受注・予算のニュースで先に動き、利益は後から追いつく——2024年に赤字でも株価3.5倍になったのはこの構造ゆえ。
2 民間エンジンは「作るほど短期の利益が減る」 新品エンジンは戦略的に安く売り、就航後の整備・部品(アフターマーケット)で長期に回収するビジネスモデル。新製エンジンの販売台数増は短期的に利益を押し下げる (会社が明記)。今期の「新製エンジン▲113億円」はその表れで、悪化ではなく将来の整備需要の仕込み。PW1100G-JMの追加検査は影響総額(ドル建て)に変動なしと会社は説明している。
3 注意点 ①為替感応度20億円/円 ——前提145円より円高に振れると利益が削れる ②純利益は一回きり要素でブレる (前期の税効果+482億円→今期は+40億円しか増えない予想の主因) ③事業売却を13件実行中 (物流システム・ボイラ・交通システム等)——ポートフォリオ改革として計画的だが、売却益が利益の見かけを膨らませる年が続く ④過去の大きな利益の谷(2016年3月期・2024年3月期)はいずれも民間エンジンや大型案件の損失発生が絡む ——再発が最大の固有リスク。
この強さを1本の鎖にすると(成立を確認する順番)
防衛予算GDP2%と航空需要の拡大 →
受注高・受注残の積み上がり →
四半期の「事業の増益」(8月上旬〜) →
営業2,400億円の達成 →
EPS 155.09円=PER 18.6倍の妥当性
この鎖のどこかが切れると、下の「前提」が崩れます 。確認の場は四半期決算 (13:00開示)と防衛・エネルギー政策のニュース 。受注は先に見えるぶん、鎖の弱点は「利益への転換」と「為替」に集中している のがこの銘柄の特徴です。
その数字の土台にある「前提」──これが生きている限り強さは続く
短期の上げ下げの土台にある「前提」です。この前提が生きている限り会社の強さは続き、崩れたら話が変わります 。
成立条件と崩壊条件
この会社の強さが続くために必要な前提と、崩れる合図
前提 1 防衛予算の拡大
防衛費GDP比2%への拡大路線と、装備輸出の緩和が続く
ミサイル量産・GCAP(日英伊の次期戦闘機)・装備移転5類型撤廃——IHIの成長シナリオの第一の柱。中期計画の投資6,500億円もこの前提の上にある
崩れるサイン :防衛予算の削減・執行の遅れ/大規模な停戦・緊張緩和で防衛セクター全体の評価が下がる(業績より先に株価に来る)/GCAPの計画変更
前提 2 エンジンの品質
民間エンジンで、3度目の大穴を掘らない
2024年3月期の営業▲701億円(PW1100G-JM)をはじめ、過去の大きな利益の谷は民間エンジン・大型案件発。現在は影響総額に変動なしと会社が説明しており、アフターマーケット事業は堅調に拡大中
崩れるサイン :PW1100G-JM関連の影響総額の増額修正/新たな検査・リコールの開示/エアラインからの補償請求の拡大
前提 3 為替と実行
145円/ドル前提が大きく崩れず、資産売却が計画どおり進む
感応度は20億円/円。仮に10円の円高なら▼200億円=事業の増益+293億円の3分の2が消える計算。営業2,400億円には計画的な資産売却も織り込まれており、市況次第の要素が2つ入っている
崩れるサイン :ドル円が140円を大きく割れて定着/資産売却の延期・中止/四半期進捗が通期計画を大きく下回る
遠い脅威 構造変化
脱炭素の揺り戻しと、重工3社の競争構造
原子力・アンモニアはエネルギー政策の追い風を受けるが、政策は選挙・国際情勢で揺れる。カーボンソリューション事業(海外)はすでに清算・売却で撤退戦に入っており、エネルギー分野は「原子力とアンモニアに賭け直した」状態
防衛の国内発注は三菱重工・川崎重工との分担構造で安定的だが、輸出市場では海外大手との競争 になる。輸出解禁は機会と競争の両方を連れてくる
3
いまの株価は割高か、割安か(PERの水準が切り上がった話)
PER =株価が「1年分の利益」の何倍まで買われているか。数字が大きいほど、期待が多く乗っている 状態です(その時点で公表されていた会社予想の1株利益で計算・株式分割は調整済み)。
PERの推移(直近2年・日次)
2024-05 → 2026-07-24
計算:その日の終値 ÷ その時点で公表済みの会社予想1株利益(分割調整後)。IHIの決算開示は13:00(場中)のため当日から、引け後開示(2024/5/8)のみ翌営業日から分母に反映。
いま
PER 18.6倍
2026-07-24(終値ベース・会社予想EPS 155.09円)
直近2年の中央値
18.6倍
およそ10〜38倍のレンジで推移
2年前(2024年5月)
10.4倍
当時の予想EPS 56.43円(分割調整後)・終値ベース
読み方 ── この2年でPERは10.4倍→高値時38倍→いま18.6倍 と動きました。利益も伸びましたが、それ以上に「PERの水準そのものが切り上がった」(リレーティング) のがこの銘柄の本質です。防衛という長期テーマに、市場が「ふつうの重工」より高い物差しを許した——いまの18.6倍は、2月の38倍からは大きく冷えた一方、2024年の10.4倍に戻るとも見られていない、「新しい物差しがどこで落ち着くか」を探している途中 の値です。EPSがほぼ横ばい(+2%予想)のいま、株価の変動はほぼそのままPERの変動=期待の増減 を意味します。
いまの株価に織り込まれている前提
いまの2,878円(予想PER 18.6倍)は、「防衛予算の拡大が続き、営業2,400億円(事業の実力+293億円)が達成される」という前提を織り込んだ値段 です。前提のくわしい中身は上の②で見た3つ。
崩れる合図 ──8月上旬の1Q決算で事業の増益が確認できない/円高の進行(前提145円・感応度20億円/円)/防衛政策の後退や大規模な緊張緩和。どれかが出たら、このページの見立ては見直しです。
4
テクニカルと需給の現在地
下値の目安・窓・移動平均線をチャートに示しました。
下値の目安とサイン(日足75本)
〜2026-07-24
↓印=窓開け(前日から飛んで下げた日)。縦軸=株価(円)・横軸=日付。線の意味は下の説明と色で対応。
━ 青い線 =25日線(2,803円)6月までの下落局面では上値の蓋だったが、7月の反発で株価が線の上に出た。いまの2,878円は線の+2.7%上
━ 赤い点線 =押し安値(2,626円)7/17(市場全体の急落日)の安値。7月の反発の中でつけた押しの目安で、ここを終値で割ると短期の流れが下向きに戻るサイン
━ 灰色の点線 =年初来安値(2,245円・6/11)▼52%調整の底。ここを割ると2月からの下げが「調整」から「トレンド転換」に変わる(強い警戒)
上の節は3,071円(7/6) 6月安値からの戻り高値。ここを出来高を伴って超えると、6-7月の底値圏が「底打ち」として確定に近づく
200日線は3,123円 長期トレンドの物差し。急騰期に大きく上に離れた後、いまは株価が線を下から試す位置関係(フル指標版 で確認できます)
上場来高値 4,698円(2026/2/10・取引時間中) 3Q決算の日に出来高7,660万株を伴ってつけた天井。ここまでの間には3,300〜3,500円台(4月の戻り売り帯)など複数の節が残る
信用残の1年
信用買い残(あとで売る予約)/信用売り残(あとで買い戻す予約)の推移(株式分割前の週は7倍換算で連続化)
信用残(週次)と売買代金
2025-07 → 2026-07-17
左目盛:万株(線)。下の棒:1日の売買代金(億円)。信用残は週1回の公表。2025/10/1の1:7分割前の週は株数を7倍に換算して接続。
━ 赤い線 =信用買い残(あとで売る予約)分割直後の急騰期(2025年10月)にまず膨らみ、下落局面の2026年5月に難平・逆張りの買いで2,671万株のピーク (5/15)→いまは1,937万株 (7/17公表)=▼27% 。高値づかみと下値買いの整理が6月から進行中
━ 青い線 =信用売り残(あとで買い戻す予約)40万株と少なく、信用倍率は48倍。倍率の高さは売り残の少なさによる見かけ で、買い残は1日の出来高の約1.6日分=大型株としては重くない
棒グラフ=売買代金 1日平均約493億円 (直近60日)と厚く、決算日は1,000億円超に膨らむ。時価総額 約3.1兆円の大型株で、流動性の心配はない
まとめ ── 需給の重し(信用買い残)は下落局面で膨らんだ分の整理がピーク比▼27%まで進み、回転も軽い。トレンドは6月に底をつけて反発中だが、上には戻り売りの節が続く。全体の結論は最終章「総合判断」 へ。
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総合判断と、今後の注目点
ここまでの整理 ── ファンダメンタルズ :全項目過去最高で3期連続最高益予想。ただし純利は+2%で、営業+45%には資産売却が混ざる——実力は「事業の増益+293億円」で追う/需給 :買い残は5月ピーク比▼27%・回転約1.6日分と軽い/テクニカル :▼52%調整から反発中・25日線と戻り高値3,071円の攻防。そのうえで、上と下、両方の「確認のサイン」 を置いておきます。
✅ 反転・続伸が「本物」と確認できるサイン(上向き)
8月上旬の1Q決算 で、事業の増益(防衛・民間エンジン整備の採算改善)が数字で確認できる——資産売却を除いた実力で通期+293億円のペースに乗っているか
受注高・受注残の積み上がり が続く(防衛・原子力の大型案件)
25日線(2,803円)の上を維持 し、戻り高値3,071円(7/6)を出来高を伴って超える
信用買い残の減少が続く (整理が進んだまま上値を試せるか)
⚠ 調整継続・警戒のサイン(下向き)
押し安値2,626円(7/17)を終値で割り込む
年初来安値2,245円(6/11)割れ =2月からの下げが「調整」から「転換」へ(強い警戒)
1Q決算で事業の増益が確認できない/PW1100G-JM関連の影響総額の増額修正
円高の進行 ——前提145円・感応度20億円/円。140円割れの定着は計画の土台を削る
防衛政策の後退・大規模な停戦や緊張緩和 ——業績より先に、セクター全体のPER(期待)に来る
📅 次に見るカレンダー
8月上旬 :第1四半期決算──事業の増益+293億円計画の初回進捗(過去2年は8/6・13:00の場中開示→当日午後に反応が出る癖。確定日は会社発表で更新)
7/30 :FOMC・日銀会合——大型株ゆえ、金利と為替のイベントは指数経由で直撃する
毎週 :信用残の公表(買い残の再増加=過熱のサイン)
随時 :防衛関連の政策・報道(装備輸出・ミサイル量産・GCAP)と、ドル円の水準(前提145円)
11月上旬 :第2四半期決算(前年は11/6)——上期での通期進捗と、資産売却の実行状況
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🧾 ニュースの見立てと答え合わせ — IHI(7013)
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出典・参考資料
このページの「なぜ」は、以下の適時開示と市場データをもとに、アルミナが整理・解釈したものです。
出典をすべて見る(タップで開く)
IHIの適時開示・説明資料(一次情報)
2024/5/8 2024年3月期 決算短信〔IFRS〕──営業▲701億円(PW1100G-JMエンジン追加検査プログラム関連)の出典
2025/5/8 2025年3月期 決算短信〔IFRS〕──営業1,435億円へのV字回復・2026年3月期予想(EPS 112.85円=分割調整後)の出典
2025/8/6 株式分割および株式分割に伴う定款の一部変更ならびに配当予想の修正に関するお知らせ──1:7分割(2025/10/1効力)の出典
2025/11/6 2026年3月期 第2四半期決算短信──通期予想の上方修正(EPS 117.49円)の出典
2026/2/10 2026年3月期 第3四半期決算短信──高値4,698円の日の開示(13:00)
2026/5/8 2026年3月期 決算短信/2025年度 決算説明資料(IFRS)──全項目過去最高(受注1兆9,547億・売上1兆6,434億・営業1,655億・純利1,609億)・今期予想(営業2,400億・純利1,650億・EPS 155.09円)・営業増益の内訳(事業の増益+293億・為替▼62億・資産売却)・税効果+482億・為替前提145円/感応度20億円・配当23円予想・事業売却13件の一覧の出典
2026/5/8 決算説明会「中長期の方向性」および「経営概況」──2040年ビジョン(For Industry & National Security)・投資6,500億円(FY26-28・研究開発1,600億円含む)・防衛予算GDP比1%→2%・GCAP・ミサイル量産・原子力/アンモニア戦略の出典
IHI 公式サイト(決算短信・説明資料の原本は公式サイトIRページから)
報道・公的資料
防衛装備移転「5類型」撤廃の政府決定・IHIのミサイル部品増産(2026年5月末の各社報道)
Kuva Space社との衛星コンステレーション協力(2026/7/22・会社発表および各社報道)
防衛予算GDP比2%方針:防衛白書(防衛省)/宇宙市場規模目標:宇宙基本計画(内閣府)——いずれもIHI決算説明資料の引用出典に基づく
データの出典
株価・出来高・売買代金・信用残・TOPIX:証券取引所が公表する市場データ・各社の決算資料をもとにアルミナが整備したデータベース(株価・株数は2025/10/1の1:7分割・2017/10の10:1併合を調整済み)
PER・移動平均・RSI等の指標:上記データからアルミナが算出(計算方法は各章に記載)
開示の時刻(13:00等):適時開示の公表時刻の実データ(「当日午後に反応」の判定に使用)
決算数値は適時開示の実数。セグメント・増減要因は会社説明資料の記載に基づきます。